医院開業コラム

節税対策にメディカルサービス法人を設立するように提案されたがどうだろうか

【ライター】湯沢会計事務所 代表税理士 湯沢勝信
ドクターにとっての第2の人生と言える「開業」が、先生にとっても、先生のご家族にとっても、また地域の住民にとっても意義深いものとなっていくことを祈念いたします。
そしてこのコラムが、少しでもお役に立てれば幸いです。
節税対策としてメディカルサービス法人を設立するのはどうだろうかという質問を受けることがあります。メディカルサービス法人とは、いわゆるMS法人のことです。MS法人とは医業と経営の分離という言葉に象徴されるように、医療機関を、医療の部分と経営の部分に分けます。医療の提供の部分は、個人経営であれば開業医が行い、医療法人であれば医療法人が行います。そして経営の部分、たとえば業者から薬や材料を仕入れるとか、診療所の保守業務とか、受付業務、レセプト請求、給与計算、経理、資産の管理等については一般法人であるMS法人がその仕事を請け負うというものです。これら経営管理の部分をMS法人に委託することにより個人開業医や医療法人は医療の提供に専念できるということが建前になっています。じかしその実態としては、個人や医療法人の所得をMS法人に流すことにより全体として節税をはかるという形で利用されている場合が多くなっています。かつてはMS法人に対する税務当局の規制も緩かったためにMS法人に対する所得の移転が自由に行われていた時期もありました。たとえば100万円でMS法人が購入した医療器械を300万円で個人に売却する取引を行うことによりMS法人に200万円の所得の移転を行うというようなやり方です。しかしこのような安易な所得移転については課税当局が同族会社の行為計算の否認という規定を持ちだして否認してきたため、現在では常識の範囲内でしか所得移転を行うことができず節税という点ではメリットは大変少ないものとなっています。また、MS法人は本来一つの組織を2つに分けて運営していかなければなりませんので、手間がかかります。従いまして個人であれば節税メリットが大きくて管理が楽な医療法人をまず選択することを勧めます。医療法人の中にたまったお金は医療のことにしか使えませんので、もし医療以外に自由に投資できるお金を作りたく、かつ2つの法人を管理できる能力があるのであれば医療法人化後にMS法人を検討してみるというやり方がいいと思いま。


2017-08/30